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アイルランド

アイルランド南東部、海に近い歴史ある町ウェックスフォード。ここに、伝統的なアイリッシュリネンを織り続ける工房があります。アイルランドのリネンは古くから、白いテーブルクロスやダマスク織りなどで世界的に知られてきました。この工房は、そうした伝統あるアイリッシュリネンに先染めならではの豊かな色彩を取り入れ、ファッション生地として世界に知られることになりました。



創業は1962年。15歳で織物の世界に入ったジム・コンウェイが、21歳のときにダブリンで始めた小さな工房が原点です。母から贈られた誕生日祝いを元手に中古の織機を2台購入し、自転車の車輪を利用して糸巻きの道具まで自作。建物の地下室でウールを織り、生地見本を自ら持ち歩いて販売していたそうです。その後、先染めのアイリッシュリネンをドイツの国際見本市で発表して成功を収め、販路は世界中へ広がりました。現在は創業者の息子たちが工房を受け継ぎ、その技術と感性を守り続けています。



この工房の織物を特徴づけるのは、異なる色の糸を組み合わせることで生まれる繊細な色彩表現です。糸を織る前に染める「先染め」の技法を用い、経糸と緯糸の色を巧みに組み合わせることで、単色では表現できない複雑な濃淡を生み出しています。一見すると均一な色に見えても、近づくほどにさまざまな色が重なり合い、見る距離や光の当たり方によって微妙に表情を変えます。



実際に訪れた工場には数多くの織機が並び、色とりどりの糸が複雑に交差しながら生地へと織り上げられていました。職人たちは織機の前で糸の動きを確かめ、製織の工程に目を配っています。創業以来積み重ねられてきた経験と技術が、現在もこの工場に息づいています。今回TUNDRAが使用したのは、すべてリネン100%の8種類の生地。経糸と緯糸の色が織りなすシャンブレー調の生地が6種類と、細かな山形模様が連なるヘリンボーンが2種類です。特に前者は、異なる色の糸が細かく混ざり合うことで、一見シンプルな無地でありながら複雑な色の表情を見せます。リネンというと硬く張りのある生地を想像しますが、これらの生地には洗い加工が施されており、しなやかな風合いに仕上がっています。リネン本来の自然な表情を残しながら、ネクタイとしても結びやすい柔らかさを備えています。




